サクッと！ヤンデレ【全キャラ名前変換可能】

【結ばれIF】距離は恋慕/親友 ページ29

大学って最高だ。自分でどの授業を取るか選べるし、それでAと過ごす時間も増える。同じ大学だから通学も勿論一緒。クラス替えの心配があった中高生の頃に比べて、今は天国に近い状況だ。

「英語のせいで〜っ！」

思わず叫んで机に突っ伏した。実は私だけ英語の授業の単位を落とし、その再履修と他の授業が重なった。色々予定が崩れほとんどの授業がAとバラバラになる。


眉をハの字にするA。

「私が取る授業を変えたら一緒になれるけど……でも前々からこの時間割にしようって決めちゃってたしなぁ」

確かにそうだけど、私は少し顔を起こして首を振る。私の落ち度にAを巻き込むって、考えただけで渋い顔をしてしまう。

「うー……つらいけど頑張る」

自分でも情けないなって思うような声で言うと、Aは一瞬考え込んだように眉を寄せて俯き、次に表情を明るくした。

彼女は引き出しから黄色の小包を出す。中身は私が数年前に渡した盗聴機だ——渡してすぐに電池を抜かれたが。

Aはそれにリチウム電池を入れて通学鞄に放り込む。私はびっくりして、少しの間声が出せなかった。

「いいの？」

盗聴嫌いだって言ってたのに。絞りだした私の声に、彼女ははにかみながら笑った。

「恋人が元気になるなら、まあいっかって」

輝いていた。雲に覆われた空から、一筋希望の光が差して照らされた花みたいだ。思わず私は両手で顔を覆う。床に転がる。熱い。触らなくても耳まで熱くなっているのがわかる。これでAにオチたの何回目？

「すきぃ……」

大人になっても、過ごす距離が近くても遠くても。ずっと彼女が私の天使であることは変わらない。それは私がそう思ってるからじゃなくて、Aの本質がそうだからだ。

変わらないAだから、大好きだ。

当の本人は、カーペットの上に丸まった私を見て吹き出す。

「大げさじゃない？」

大笑いしながら言われたら、確かにそんな気がする。私もつられて笑い転げた。相変わらずAの笑い方は奇麗で、私もつられて楽しくなって。こんなに幸せなことってないよね。

お腹が痛くなるくらい笑った後。肩で息をしながら私はAの目を見る。

「Aが一つわがまま聞いてくれたから、私も一つ聞くよっ」

何度かぱちぱち瞬きしたAは、頷いて、手で招く仕草をした。近づいて耳を貸す。

「それじゃあ——」

囁かれたささやかな願いが愛おしくて、私は今日も尊さに身を震わせる。

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